結果発表

第22回小説ショコラ新人賞にご応募いただき誠にありがとうございました。
厳正なる審査の結果、奨励賞、期待賞、キラリ賞をそれぞれ1名選出という、大変嬉しい結果となりました。
奨励賞を受賞した1名はデビュ―決定! 今後の活躍をご期待ください!



◆総評◆




継続してご応募いただいている方が増え、皆さまの創作への変わらぬ熱意を感じることができました。
今回は今までに比べて現代ものをテーマにした作品が多く集まり、文章のレベルもグッと上がった印象でした。
一方で、書く側の好みだけが詰め込まれた作り込みの甘いキャラクターや起伏のないストーリー構成など、独りよがりで読者が感情移入できずに置いていかれる作品が多々ありました。
弊社は投稿作品の傾向を問いません。
それぞれの萌えを形にしてほしいと思っておりますが、賞を取ればプロとして執筆活動を行うことになりますので、ご自身の作品の先に読者がいることを常に想定して書くようにしましょう。

投稿作を拝見しまして、とくに意識していただきたい点は以下の通りです。

・話の軸を意識できているか
話の軸とは、テーマやジャンルではなく、「主人公の目的や解決すべき問題など、メインプロットを展開するうえで外せないもの」のことです。
刑事ものなら「犯人を捜す→犯人逮捕で事件解決」、ファンタジーなら「魔王を倒しに行く→魔王を倒して世界平和」など。物が話の軸になることもあります。
この軸が定まっていない場合、読者は「なにを伝えたい話なのか」が掴めず、物語の展開を追うことを困難に感じ、物語の核心に迫る前に興味を失ってしまう可能性が高くなってしまいます。
展開が予測できないこと自体は必ずしも欠点ではありませんが、それが「悪い意味で読めない」状態に陥ると、物語の展開に一貫性がなく話の筋道が見えづらいために、「今どこを読んでいるのか」「なにが重要なのか」が分からなくなってしまいます。
結果、物語の流れに乗れず感情移入や理解が妨げられ、気づいたら話が終わっていた、なんてことになりかねません。(読後の満足感を得られません。)
「話の軸がブレている」というのは、最初に目的として定めたものが途中で変わってしまう状態で、「話の軸がない」というのは、そもそもその目的自体がない、もしくは読者に伝わっていない状態のことです。

そうならないために、作品の軸を明確に定め物語の冒頭で主人公の目的や課題を提示し、それが物語全体を通してどのように変化し、達成されていくのかを意識的に設計する必要があります。

例えば、「資産家の一人息子で親からαの子を成すことを迫られているが結婚願望のないαと、お金にしか興味のないΩが出会い、利害の一致から仮面夫婦になる」という話があったとして、軸を「二人の結婚生活」に設定した場合…

序盤では、αの家庭事情やΩの金銭への執着の背景を少し書いておくと、キャラクターに深みが出ます。
物語の中盤は、仮面夫婦としての生活に生じる摩擦や揺らぎなどを通じて利害の一致で繋がっていた二人の関係がどう変化していくかを書きます。
エピソードは、「二人の結婚生活」という物語の軸に絡めて書くことで、読者にとって意味のある変化として受け取られます。

そして終盤では、仮面夫婦という関係性に決定的な転機が訪れるような出来事を用意しましょう。
互いの感情が試される場面で、主人公たちがどのような選択をするのか。
読者はその答えを通して物語の余韻を味わい、読後の満足感に繋がります。

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今回も規定を守れていない方が多数見受けられました。
名前の前に★マークがついている方は今回は評価対象としましたが、
以下のどれか、もしくは複数を守れておりません。

・書式設定が 20文字×20行 になっているか確認しましょう。
 ルビを振ったことで、行数が20行未満になっている方がいます。ルビは振らなくても問題ありません。
・ノンブルを振りましょう。
・あらすじは物語の最後まで書いてください。
・応募用紙は 弊社HPからダウンロードしたもの をご使用ください。
 応募用紙は 原稿の最終ページの裏に貼り付けてください
 (※原稿の最終ページに両面印刷するのは可)。
 封筒に貼るのは個人情報保護の観点から絶対にしないようにしてください。

繰り返される場合は故意とみなし規定外といたしますので、次回はよくお確かめの上でご応募ください。



◆受賞作品◆
【大賞】
該当者なし

【佳作】
該当者なし

【奨励賞】
小川渚「蠱惑の城」

【期待賞】
片里狛「シガー×シュガー」

【キラリ賞】
藤吉とわ「坊ちゃんとマサ」


奨励賞
「蠱惑の城」小川渚 (原稿用紙150枚)

◆あらすじ◆
香港の街外れで漢方医を営む凱(カイ)は、幼馴染の科林(コリン)から娘にかかった呪いを解くために、九龍城に潜むと噂される伝説の蟲師・紅蠍(ホアシェ)を探しに行く間、娘を見ていてほしいと頼まれる。
科林のことを密かに想う凱は、危険な目に遭わすまいと代わりに行くことを決意する。
紅蠍は想像より若く、驚くほど美しい顔をしていた。
しかし、代理で人を寄越すような奴は嫌いだと跳ね返されてしまう。
科林への好意から自ら代理を志願したことを白状すると、凱の誠実さを気に入った紅蠍は、自身の作る情蟲(惚れ薬)の効果を確かめる実験台となることを条件に依頼を受けた。
こうして、二人の情蟲作りが始まるが…。


◆評価 B+◆
ワクワクする設定と呪術師の3つの掟から始まる禍々しい雰囲気漂う印象的な冒頭シーンで一気に引き込まれました。
しかし、中盤になると話の流れが単調になり、序盤で作った勢いを活かしきれていませんでした。
二人が恋心を深めていく日常パートでは、視点の切り替えはあるものの、描かれているのは惚れ薬の効能を確かめ差し入れのエッグタルトを食べたりすることの繰り返しで、物語としての起伏に欠けています。
さらに、無償の愛を求めて惚れ薬を作る攻めの動機に説得力がなく、飲ませたい相手や作らなければならない必然性が見えないため、物語の中で機能していません。
「他の術師からの復讐」が再会の着火剤で終わってしまったのも惜しかったです。
惚れ薬を軸に展開しつつ復讐者の影を匂わせる伏線を張っていけば、読者を惹きつける展開が期待できたのではないでしょうか。
とはいえ、そういったストーリーの粗を補う良さがありました。
満たされない二人の苦悩や葛藤の丁寧な心理描写に心動かされましたし、人間らしい醜い嫉妬心や欲求がとても生々しく、攻めの燻った感情がヒシヒシと伝わってきました。
一方で、受けの恋愛感情があまり読めませんでした。
命懸けで九龍要塞に行くほど好きな人がいたのにも拘わらず、そこから攻めへ気持ちが傾いた際の描写が少なく、正しさに縛られて生きてきたキャラのはずが、年齢差に苦悩することもなく攻めを好きになってしまっていることも、あっさりとしていて物足りなかったです。
設定自体には十分な魅力があるので、伏線の活用や展開の工夫によって、より印象的な作品に仕上げることができたはずです。
設定を単なる背景としてではなく、登場人物の行動や感情に深く関わる要素として書いていただけると、物語全体の説得力と厚みが増すと思います。




期待賞
「シガー×シュガー」片里狛 (原稿用紙138枚)

◆あらすじ◆
NYの大手サプリメント会社に勤めるニール・ノーマンは重度のヘビースモーカーであった。
ニールは住居の向かいに新しく出来たドラッグストアで、大量の煙草と一日分の食料である栄養携帯食を購入しようとしたところ、日本人店員である雨宮に声を掛けられバックヤードに連れ込まれてしまう。
雨宮は職業上、大量の煙草とサプリメント買うニールが気になったのだという。
そんな雨宮に「もっと食え。ハンサムが台無しだ。煙草をやめろ」としつこく言われ、ニールは困惑する。
しかし雨宮は綺麗な顔をしていたため、ナンパかと思ったニールは「アンタが俺の煙草の変代わりになれ」とそのままキスをしてしまい……。


◆評価 B◆
現代もので特殊な設定があったり、大きな問題が起こったりするわけではないですが、キャラクター達の海外特有のテンポの良い会話の描写がとても上手で雰囲気があり、世界観に入り込みやすかったです。
冒頭でいきなりキスをすることで「今後の二人の展開が気になる」という引きを作り、さらに「煙草の代わりにキスをする」だけの関係で単調になりそうなところを、成長していく恋心を絡めながら進めていたので飽きずに読むことができました。
また、攻めはとても色気があり個性的なキャラなのに比べ、受けは美人でたまに男遊びをするという以外これといった特徴がないキャラでしたが、しっかりと攻めのことを好きになり落とされてく心理が描かれていたので、攻めに存在感で負けることがなく好感も持てました。
ただ、最後は不完全燃焼でした。
「煙草の代わり」ではないキスで終わったのはとても良かったです。
しかし、そこまでは受け視点のみで受けと離ればなれになった後の攻めの心情や行動が描かれておらず、「ここで終わり!?」と落胆してしまいました。
一番盛り上がるシーンだけ描いても読み手側は満足しません。
そこにいくまでの気持ちの積み重ねや行動の過程があるからこそ、読者はより共感して感動したり、喜んだりします。
折角両方の視点で進めているお話ですしページ数にも余裕があったので、最後に攻め視点で「日本に来るまでに何を思って何故行動を起こしたのか」などを描写していれば、もっと読みごたえのあるお話になったと思います。




キラリ賞
「坊ちゃんとマサ」藤吉とわ  (原稿用紙 149枚)

◆あらすじ◆
村治雅人が中学二年の時、父親が不審死を遂げた。
それからずっと荒んだ生活を送っているなかでヤクザと諍いを起こしてしまい、身を隠すために住んだマンションで堂嶋渉と出会った。
雅人は幼い渉にとても懐かれていたが、世話になっていた田上組のトラブルによって、何も言わずに渉の前から姿を消すことに。
それから7年後、洋食店をオープンした雅人のもとに、高校生になった渉が「家出したから一緒に暮らしたい」と突然押し掛けてきた。
雅人は戸惑いながらも一緒に住むことを許す。
順調な同居生活だったが、渉に「好きだ」と迫られ、雅人は渉が高校生であることを理由に誤魔化し続けていた。しかし、突然店への嫌がらせが始まり…。


◆評価 B-◆
店への嫌がらせ、黒幕との対峙などの展開に最後はどうなるのだろうとドキドキしながら読むことができました。
また、甘えたり、急に迫ったりする渉と振り回されながらもなんだかんだ受け入れてしまう雅人という二人の関係性はとても魅力的に書けていました。
しかし、雅人視点だから書きにくかったのかもしれませんが、雅人が事態を収める内容が主となり、渉の存在が薄れています。
視点は雅人であっても、幼く何も知らなかった渉が成長して雅人と共に活躍することで、二人が主役であると印象づけることができたはずです。
また、サスペンス要素が多く、肝心の恋愛描写が少なかったことが残念です。
二人が出会う過去の描写が説明文のようになっており、なぜ渉が雅人に長年執着するほど好きなのかが読み取れませんでした。
また、雅人にとって渉が可愛い弟のような存在から恋愛対象へといつ変化したのかも分からず、渉との関係を進めたいと考えることが唐突に感じられました。
心理描写を丁寧に描いたり、気持ちが変化する場面を増やしたりすることで、恋愛面の盛り上がりを作ることを心がけてください。
二人で困難を乗り越える過程で恋愛感情が大きくなっていくと、サスペンスと恋愛のバランスがとれてより面白い作品になったと思います。



選外作品(B~E評価・以下順不同)


B評価
真山密輸「ワーでもキャーでも言いやがれ」/夜見澤リュウ「孤独な妖狐と、500年を巡った愛」/
満屋ゆの「繋がる糸のその先に」/高翔えいみ「芳しのアルファは花を喰む」/
野中にんぎょ「センタッキ・ロマンス」/佐々木えるも「Favorite Song」/
小池月「心がアルファのオメガ妻は、夫アルファの座を狙う」/なつきはる。「二度目の初恋」


C評価
架月ひなた「ドム嫌いの人間サブは妖ドムに妄愛される」/トオノホカゲ「半獣オメガは獣王に恋う」/
伊藤あまね「シンデレラフィットの恋を始めよう」/楓「フェイク」/北国冬雪「廻る華」/
豆苗みゅか「綺麗な僕を君で汚して」/榎戸えこり「春はあなたの隣」/
色華カドノ「願わくは、運命のαとこの恋を」/南条百花「寄宿学校のカナリア」/
古町橙茉「花が散っても、あなたの隣で。」/森野稀子「花筏流るる異種族の恋」/
舞々「暗闇の中、君の香りで目を覚ます」/水ノ灯「調香師は今夜も眠れない」/
にっきょ「生きていくなら、君とがいい。」/瀧島薫「運命が君を離さない」/
森野結森「泣けないうさぎは暗がりの月を呼ぶ」/花宮守「渇愛を満たすは龍の国」/
夕月雅貴「耳たぶは乳首じゃありません!」/熊野実「夜にほどける」/★半田案「かたむすび」/
雫川サラ「本と、コーヒーと、勇気を少々」/アネモネ「皇子が愛を知ったとき運命の歯車が狂いだす」/
日置キヨト「君のためなら」/実園ココ「ユウくんになら取り憑かれたい」/
栄つかさ「エレベーター・クライシス」/四宮薬子「聖なる騎士は偽りの女神に恋をする」/
オキテ「鉄と穢れとカタルシス」/羽多奈緒「臨海点のふたりーセンチネルバースー」/
バルバルトゆあ「スロー・ラーナー アルファとオメガ、ふたりで学ぶ愛の形」/
不破ぷりん「その男、名はフリージア」/丹路槇「白衣の背中」/草葉トイ「凛と奏でる」/
藤嶺源斗「贋物の愛を教えて」/久遠るり「赤色の運命」/五月眞「微睡む竜は愛の夢を揺蕩う」/
久遠ユウ「あふれゆくままに」/桐生亜久夜「月の歌、星の導」/こーの新「さくらんぼ」/
水無月にいち「世直しオメガ、番にならせていただきます!」/山内緑「親友の子どもに殺されるまで」/
雪水秋風「僕の運命を、君に刻む」/我妻ゆめち「たとえその目に殺されたとしても」/
よびび「腕のなか、沼のそこ」/三葉秋「銀色に輝く漆黒のセレナータ」/
はる「明日も君が笑顔でいるために」/ペンネームなし「芳烈なふたり」/★ペンネームなし「暴風雨」


D評価
逢関かける「灰を溶かす」/赤坂摩利支天「義理の兄貴」/銘里響希「千の夜をかける麒麟」/ 大虬「霧のバイティル」/小詩「てのひらのホタル」/四詢「呪い呪われ!振り振られ!!」/
月瀬もな「愛人オメガは運命の恋に拾われる」/七実櫻夏「愛をこめて花束を」/
子安いおり「国外追放の元騎士は報われなくても傍にいたい」/沖弉えぬ「ピアニストは恋を奏でる」/
幸里「歌うたいとギター弾き」/長谷川エリー「好き好き大好き一生いっしょ」/
志咲さき「恋はミ二マルになりません!〜汚部屋を片付けたら幼馴染に溺愛されました〜」/
リリーブルー「薔薇は夜に啼く」/沢村「Bite and Belief」/立華あみ「白いゼラニウム」/
田吾サク「学校改変☆凡人伝説」


E評価
川野詩「寝室の海」/花咲ひいろ「君に恋とかしてもいいですか?」/桜河海「乱れ咲き 伴白髪まで」

規定外
レタストシハムカツ「リベルタス〜真っ赤な傘〜」(ジャンル違い)
波和いのこ「妄執ディフェンス」(書式間違い、ページ不足)
コハク「君巣に落ちること勿れ。」(書式間違い、ページ超過)
たたた、たん。「浮気した彼の行方」(書式間違い、ページ超過)
板倉椿季「路線図の中の君」(書式間違い、ページ数計算不可)
あおあお「僕のAIはスパダリです」(書式間違い、ページ超過)
合瀬由乃「夏に跳ぶ」(ページ超過)
敷島尽「愚王キケロの嫁入り」(ページ超過)
逢坂とこ「死ぬときまでに証明するね」(ページ超過)
仲町葵「Holy Night」(ページ超過)
桐乃乱「オメガバース・ラプソディ〜運命はハニークロワッサンな香り〜」(ページ超過)



 第23回小説ショコラ新人賞の詳細はこちら



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