結果発表

第18回小説ショコラ新人賞にご応募いただき誠にありがとうございました。
厳正なる審査の結果、期待賞1名、キラリ賞を2名選出いたしました。
次回もどうぞ奮ってご応募ください!


◆総評◆




今回は現代設定の作品が多く寄せられる一方、
オメガバースなど商業作品でも人気のファンタジー設定も目立ちました。
また文章力のある作品が多い一方で、評価が伸びない結果となりました。

考えた設定・エピソードをうまく物語に組み込めていないことに気づかず、
何の役割も持たず、面白みのないシーンになってしまっていたり、
ここからが一番の盛り上がりになるはず、のシーンを飛ばして結末に至ってしまっていたり、
物語の構成がよくないことが大きな要因です。

書き上げた原稿を客観的に推敲するのはなかなか難しい作業です。
小説は文章量がそもそも多く、執筆者は「良い」と思って書いていること、
第三者に意見を求めても厳しいことは言いにくく、
また指摘が的確でも作者が納得して改善できるかは別の話だったりと、
思い当たることがある方もいるのではないでしょうか。

そこで構成の良し悪しを自分で判断するためのテクニックを一つ教えたいと思います。
もちろんこれが絶対的な技術ではありませんが、参考にしてみてください。

弊社では800字以内で結末までわかる「あらすじ」が投稿時に必要です。
これをただの「おまけ」「面倒臭い作業」と考えていませんか?
結末まで書かなければいけない「あらすじ」を書くタイミングは原稿の完成後がほとんどでしょう。
どんな舞台で、どんな受と攻が、どんなふうに出会い恋をするのかを要約する必要のある「あらすじ」は、
言わば原稿完成後に作成するプロットです。

●あらすじに書いた設定説明は本文中に入っていますか?
 あらすじと違って説明が必要なところになく、後出しになっていませんか?
●流れをうまく説明できず、あらすじの文章がおかしくなっていませんか?
●真っ先にあらすじから削った部分(重要ではないエピソード)の描写に力を入れていませんか?
●あらすじを読んだ時、詳しい内容を知りたいと自分でわくわくしますか?

やってみてもいまいちピンと来ない場合は客観視しきれていない可能性があります。
好きな商業作品を自分でプロットに変換することで、「大筋を掴む」感覚を磨くといいかもしれません。
投稿に必須な作業を「おまけ」のままにせず、ぜひ自分の作品作りに役立ててください。

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今回、規定外となった方の以外にも規定を守りきれていない方が複数見られました。

●応募用紙の年齢欄が未記入
●あらすじが800字以上
●20字×20行=1Pですが、文字数や行数を間違えていたり、1枚=1Pと計算している

重大な違反ではないため、今回は評価対象としましたが、
繰り返される場合は規定外といたしますので、よくお確かめの上でご応募ください。

今一度作品を振り返り、ぜひ今後の課題を見つけてください。
次回のご応募もお待ちしております。


◆受賞作品◆
【大賞】
該当者なし

【佳作】
該当者なし

【奨励賞】
該当者なし

【期待賞】
「振り向くな、片想い」真夜野ふみ

【キラリ賞】
「4月の雪、11月の約束」樺野サハラ / 「初恋結ぶ、愛の花冠」四宮薬子

期待賞 ──── 賞金1万円
「振り向くな、片想い」真夜野ふみ(原稿用紙124枚)

◆あらすじ◆
日英ハーフである大学生で俳優の鈴木和泉は、親友の鈴木護に片想いしている。
けれどゲイだと知られたら親友ですらいられなくなってしまうと思い、
ゲイの役作りをしているという建前で彼への好意を伝えるに止めていた。
ある日、群像劇でストレート男性に恋をするゲイの役を演じることになった和泉は、
照明演出家を目指す護の師匠が舞台の照明を手がけることになったと知る。
いつか護の操作する照明の舞台に立ちたいと思っていた和泉は張り切るが、
片想い相手の何気ないセリフに失恋する役柄がどうしても自分と重なってしまい、
上手く演じられずにいた。
リハーサル中、緊張と不運が重なって得意のダンスシーンで転んでしまい落ち込む中、
護が知り合いがいるとやりにくい、と言う理由で照明担当を辞退したと聞き…。

◆評価 B◆
こんな話だろうという予想を裏切らないことで全体的にまとまりがあり、
小説として読みやすい文章、俳優という設定をおろそかにせず舞台のこと、
ラブシーンを丁寧に書いていることが評価につながりました。
また和泉の片想いの演技を見て、
いつも自分に見せている顔だと思うことで和泉の気持ちに護が気づくなど、
普段から付き合いのある親友という前提が生きる描写で物語に深みが出ました。
ただ舞台の話が中心になっていて恋愛要素が薄くなっていました。
過去に護が同級生のからかいや反発から守ってくれたというエピソードがあるものの
将来の夢を持つきっかけで終わり、恋に発展したきっかけなどは書かれてなく、
何かがきっかけで親友としての均衡が崩れたり、二人の仲が険悪になることもなく、
平和的にハッピーエンドになり、ドラマティックさに欠けます。
両片想いという設定や、展開を作れるポイントがあるだけに、残念でした。
特に「元同級生の真島」が二人の仲を邪魔する当て馬でも協力者でもない、
中途半端な立ち位置になっているのがもったいなく、
和泉と護の関係が変わるキーマンにすると良かったと思います。



キラリ賞 ──── 賞品5千円分図書カード
「4月の雪、11月の約束」樺野サハラ(原稿用紙144枚)

◆あらすじ◆
ある日、涼の営む洋服の修繕やリフォームを請け負う店に、
憧れであったα・Ω性関連の薬品開発を牽引する一流の研究者であるαのイリヤが訪れる。
彼はかつてΩでありながら副作用の少ない抑制剤の研究に携わり一定の成果を上げた涼に、
最後に出席した学会発表の時にもされた、共同研究の話を再び持ちかける。
研究環境の厳しさに心折れ研究から離れた涼はその話を断るものの、
イリヤの香水の匂いが気になり連絡先を交換する。
だが匂いの正体は香水ではなく抑制剤を服用していたら感じないはずのフェロモンの香りだった。
抑制剤の効かないフェロモン。それはイリヤが「運命の番」である証で……。


◆評価 C+◆
この世界においてどんな抑制剤があるのか、どんな弊害があるのか、
キャラたちがα・Ω性に関してどんな研究をしているのかなど、設定が良く作り込まれており、
荒削りながらこの物語でやりたいことが伝わってきて、先を期待させる作品でした。
文章自体は読みやすいのですが、冒頭10Pほどがポエムになっていることで
主人公のことや状況がまったくわからず掴みがとても悪いです。
プロローグにポエムを入れる場合は2P以内に収め、本題に入りましょう。
またイリヤとは関係のない涼の過去・脇役とのエピソードを入れ過ぎています。
イリヤが直接関わらないエピソードは、二人が絡んだり仲が深まるきっかけ程度の描写に抑えて、
αとΩだからではない、お互いに惹かれあっていく過程を中心にしたストーリーにすると、
もっとクオリティの高い、面白い作品になったと思います。


「初恋結ぶ、愛の花冠」四宮薬子(原稿用紙150枚)

◆あらすじ◆
メア・ドゥリース帝国の第五皇子であるサリネは、
オメガであるために遠く離れたシャルパンティエ王国の国王・ニコラスへ突然嫁ぐことになる。
女のように扱われたり、オメガを下にみるアルファが大嫌いなサリネは初夜の際、
自分を無理やり妻にしたニコラスを思いきり拒絶する。
しかしニコラスは怒ったりせず、サリネの意志を尊重して無理に抱くことはしなかった。
ニコラスはその後も優しく接してきて、彼を誤解していたと気づいたサリネは徐々に心を開いていく。
しかし二人が距離を縮めていたある日、ニコラスが家臣たちから
「世継ぎが望めないなら側室をとるように」と言われているのを聞いてしまい…。


◆評価 C+◆
登場人物の言動から、キャラクターの性格や書きたい恋愛がよく伝わってきました。
ツンツンとしたサリネとそれを包み込む優しいニコラスの対比も面白かったです。
しかし表現力、構成力はまだ未熟です。心理描写やその場の状況描写が少ないので、
キャラクターがどうやって心を動かされたのか説得力に欠けています。
特に心理描写は、サリネがニコラスに惹かれていくようすが段階的に描かれていないため、
事件が起こる度にとるサリネの行動が突然に感じられました。
今回、サリネはニコラスに対して”嫌い”という感情から始まりますので、嫌いな人から気になる人へ、
そして好きになっていくというサリネの気持ちの変化をもっとじっくり読みたかったです。
サリネが嫉妬を覚え戸惑ったり、葛藤しながらもニコラスを想って行動してしまう心情がもっと丁寧に
表現されていると良かったです。きっかけとなる小さな事件はちりばめられているので、
それをうまく利用して二人の感情を変化させることを意識してください。


選外作品(B~E評価・以下順不同)


B評価
かなたのぞむ「癒しの花は嵐に揺れる」

C評価
七都あきら「そのネズミは一緒に帰るかもしれない」
花山ころも「ビッチなサキュバスが好みドストライクだなんて聞いてない」/早川隣「紅ノ絆」
離析「接蝕」/笹木深冬「君が天使でも悪魔でも」/衣吹密「ライクアゴールドフィッシュ」
草津玲緒「アシュランス」/芙美みのり「オメガの首輪を解く鍵は」/じゅん「甘い策略」
三枝さえ「夏に堕ちたいつかの神様」/奥山かのん「真夏の夜の夢」
絢音マド「ぐうたら人狼王と毒舌料理人の花嫁」/森野稀子「青き春雷」/羽多奈緒「期間限定の恋」
依田一束「親愛なるエトス」/知水晶「白衣のオメガは夢を見ない」/オオトリ「温かい人」
設楽ひえん「社畜は恋を選べない」/山田太郎「明日、君は僕を愛さない」
なちょりー「寺生まれのTは用意周到に抱かれたい」/床谷汝「三匹のマゾ豚」
このみのこ「神前式、濡らす花嫁」/ナナカワワカナ「スノウピークで恩返し」
今野陽「赤い糸はきっと繋っていないから」/まえにし猿棚「リュカに捧げる二発の弔銃」
花房ジュリー「フリマアプリから始まる恋があったっていいじゃない」/泥川うな「貴方の声に恋してる」
タカツ己詩「その手で僕を連れ出して」/柳りと「吸血ハニーの新たな日常」
川中カエル「言葉に囚われ、救われ、生かされる」/白妙スイ「銀の月を貴方にあげる」
大和一希「ただ一人のための才能」/紫呉うり「マイバディ・マイセンチネル」
冬白つぐみ「memoria」/葉月めいこ「触れて触って抱きしめて」
芳岡なつき「つむいで、ほどいて、」/化禀「罪深い僕は青龍様に罰されたい」
午後野つばな「新世界」

D評価
咲楽すら「嘘つきは探偵のはじまり」
君嶋復活祭「城壁に囲まれた国に生まれて神の祝福と呼ばれて育ち」/綾部ツキ「泡沫の崩壊」
井織おりべ「終わらせた恋に鳴らすジャズ」/各務緑「僕の罪」
辻宮円「ヴィンテージヌードはポートフォリオには載せられない」/喜多見いち「祝祭の救い」
まなせりじゅ「恋の旋律的短音階」/芦屋満「恩讐のかなたに」/土方豪「傷はその先で愛を紡ぐ」
夏崎ゆうき「一条の光」/西塚めいこ「はなばえ」/空友美「樹と律」
瀬々らぎ凛「君の歌が鳴りやまない」/君影草子「彼の総て」/石川つくも「悪魔の手のひら」
下藤「お抱え学者の逃避行」/かなの「どうして俺なんだ」/安西広人「一九七三年、僕はー」
音文晶子「夕暮れの家」/深甘あさぎり「誰かの二番目じゃいられない」
白浜釘之「エロスの撃つ矢に射られたら」/東院さち「竜王の一途な恋愛は咆哮になりて」
絹雨音「香る春」/伽藍カラン「廃屋とガソリン」/双海咲紀「仮想恋愛」
路地裏乃猫「青が見つめてる」/筧森生「クロックポジション」/氷宮多稀「二人の棲家の恋仕事」
飯鹿元「溺れる者は「あい」をもつかむ」/兎耳山・S「殺人犯の少年はお嫌いですか?」
立石智佳子「片翼と獅子の苦悩」

E評価
稲星柚初「終わりが始まり」/水面揺「純情殺人鬼と死にたがりビッチ」
菜苑まつね「あの場所で、あの場所へ」/水上ゆら「ラスト・ジャッジメント」
翡翠華「とにかく君とチェキが撮りたい」

規定外
ページ超過:丹野かおる「氷河にしずめ」/織部ユリ「俺たちアイドルは発情禁止です!!」/翁「清士郎」
ページ不足:こみこみこ「情人の愛」
ジャンル違い:小森林凛「セブン・デイズ・ア・ウィーク」
あらすじなし:颯海陽気「天国へのキス」
二話構成&ページ不足:道「若草の茂み」
複数違反:麗華「タイトルなし」


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