結果発表

第17回小説ショコラ新人賞にご応募いただき誠にありがとうございました。
厳正なる審査の結果、キラリ賞を二名選出いたしました。
次回もどうぞ奮ってご応募ください!


◆総評◆




今回はお仕事、ファンタジー、大学生ものなど様々な設定の作品が集まりました。
しかしながら、その設定を生かした「恋愛の過程」を書けていない方が多くみられました。
例えば、大学生活で一度も恋をしたことがない受が攻に突然一目惚れして、
攻の性格を知りさらに好きになっていくだけの展開は読者も惹かれません。
読者の感情を揺さぶる展開にするには、試練や事件、すれ違いなどのエピソードを自然に盛り込み、
そこに主人公視点の繊細な心理描写をいれていくことが重要になってきます。
テンプレートに当て嵌めただけの、うわべだけの感情描写では読者からの共感を得ることはできません。
悲しいという感情にも様々な種類があるように、日常で得られる感情を普段から意識して、
色彩豊かな表現力を磨きましょう。

キャラクターに魅力が足りない、もっと掘り下げをなど指摘されたことがある人も
この「恋愛の過程」を見直してみてください。
「恋愛の過程」を書けるようになると「キャラクターの魅力」も自然と生まれます。
なぜなら、恋愛の過程を書くために必要である繊細な心理描写を考えることは、
キャラの性格や魅力を考えることでもあるからです。
掘り下げられた魅力的なキャラクターを作るためには、
大雑把な設定(王子・リーマン・優しい・意地悪等)を与えるだけでは足りません。
例えば、ただの優しい普通のキャラクターであったとしても、
その人物のどんな言動が優しさを感じさせるのか、その優しさは善か悪か、
人に優しくしようと思うきっかけが過去にあったからなのかなど、
キャラクターの背景を考えると自ずとキャラクターの個性がでてくると思います。
つまり、繊細な心理描写はキャラクターの細やかな性格や背景設定があってこそのものなのです。
著者が描写していないところまで、読者が想像できるくらいに
キャラクターの理解を深めてから執筆するようにしてみてください。

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今回、誤字脱字がある方が目につきました。
一度プリントアウトして校正する、など工夫してみてください。

句読点が追い込み設定になっていることで、一行21字になってしまっている方がいました。
もう一度フォーマットを見直して追い出し設定になっているか確認お願いいたします。

過去、弊社に応募したことがある作品を手直ししたものを送付いただいた方がいました。
作品の完成度が上がっていたとしても、評価対象外となりますのでご注意ください。
(弊社へ一度も送っていない原稿が評価対象となります)


◆受賞作品◆
【大賞】
該当者なし

【佳作】
該当者なし

【奨励賞】
該当者なし

【期待賞】
該当者なし

【キラリ賞】
「懐かない猫を懐かせるには」午後野つばな / 「鶴の嫁入り」 奥山かのん


キラリ賞 ──── 賞品5千円分図書カード
「懐かない猫を懐かせるには」午後野つばな(原稿用紙 148枚)

◆あらすじ◆
デザイン会社で働く淳一は、後輩の祐介に手を焼いていた。
祐介はデザイナーとして才能はあるものの、周囲と打ち解けようとせず淡々と仕事をこなし、
しょっちゅう同僚と意見を衝突させていた。
ある日、祐介と同僚が揉めているところを仲裁した淳一は、少しでも打ち解けるように二人を自宅に招く。
そこで普段の雰囲気とは違う祐介に「俺にもやさしくしてください」と言われ、ドキドキしてしまう淳一。
それからというもの、祐介は仕事終わりに淳一の家に来るようになる。
自分にだけ心を開く姿がまるで猫のようで、
祐介を恋愛対象として意識している自分に戸惑った淳一は彼を避けてしまう。
しかし、変わらず家に来ようとする祐介。
なぜそんなに自分と飲みたいのかと問うと、「犬飼さんが好きだからですよ」と告白され――。


◆評価 B-◆
癖がなく、キャラづけも出来ており会話も自然で読みやすい文章です。
ただ全体的にイメージがハッキリしていないように思いました。
「懐かない猫を懐かせるには」というタイトルですが、
スタート時点で祐介は淳一に懐いているため、ズレを感じました。
祐介が行動で淳一への好意を表わすこと自体は良かったのですが、
淳一を「鈍感」というほどのアプローチしているようには見えず、
また転職した直後でもないため、アプローチし始めたキッカケも分からず、
どんな恋愛にしたかったのかが曖昧です。
二人が同じプロジェクトに関わる中「盗用疑惑」に関するトラブルが起きる、
職場の中で攻が原因で起きた人間関係の拗れに受が巻き込まれる、
など中心にするエピソードを絞るべきでした。
4章での淳一が祐介に甘えられて、恋愛対象として意識してしまったり、
ちょっとしたやりとりからの微妙な二人の距離感などは上手く書けており楽しめました。
ただ社内での“デザイン盗用疑惑”以後の関係性や、祐介の陰の努力を見ての変化が淳一にないため、
盛り込んだエピソードを充分に活かせてなく行き当たりばったり、書きっぱなしに感じます。
時系列で物語を書けば全てが説明できるわけではありません。
起きたトラブルが結果的に二人の仲にどう作用するのか、
ここで好感度を上げる・下げるなど目的を設定し、目的から外れた内容は削除しましょう。


「鶴の嫁入り」奥山かのん(原稿用紙 150枚)

◆あらすじ◆
親に捨てられた志鶴は9歳の時に友禅職人・松永の家に引き取られ、
彼の取引先の老舗呉服店「明秀堂」の次男・誠二郎と出会う。
いつも優ししい誠二郎を兄のように慕う志鶴だったが、
15年の月日の中、憧れはいつしか兄以上のものになっていた。
ある日、友禅の師匠でもある松永が入院し、志鶴が代わりに仕上げた着物を「明秀堂」へ納品する。
その着物を偶然店を訪れた茶道の家元の娘に気に入られ、無理な注文をされる。
誠二郎の立場を守りたい気持ちから、志鶴は彼の心配を押し切り注文を受けた。
だが期日前に完成したにもかかわらず
「明秀堂」の当主で誠二郎の兄・康太郎に理不尽なことを言われ落ち込む中、
誠二郎に注文を完成させたお礼の食事に誘われ告白される。
幸せを噛みしめながら再びの逢瀬を心待ちにする志鶴だったが、
康太郎に呼び出され誠二郎の結婚を知らされると共に、身を引くように言われ…。


◆評価 B-◆
全キャラが京都弁、一般には馴染みのない友禅職人と呉服屋という設定でしたが、
うまく説明しながらストーリーが進められていて、周囲との関係や世界観が自然と伝わる作品でした。
ただ主人公のけなげな性格が伝わってくるのに比べ、
攻が受に優しい人というだけの印象になってしまっているのがもったいなく感じました。
お互いに想いあっているのは伝わってきますが、保っていた一定の距離を縮めるきっかけが
「二人きりになることがなかったから」というだけで、
すぐに両想い&ラブシーンに入ってしまったのが残念に思いました。
自分のことを好きになって欲しいゆえの行動や、嫉妬、
相手の一言に一喜一憂したり、すれ違ったりなど、二人の恋愛の過程が読みたかったです。
攻の印象が弱くなってしまった原因としては、仕事の描写に重心が寄ってしまい、
呉服屋の当主ではない攻の関わる余地がなかったことも挙げられます。
結果ストーリーを展開する役割を脇役が担う形になっていました。
主人公側(視点側)でない場合、どうしても印象が薄くなりがちになりますので、
攻の行動で受が影響を受けるなど、二人がお話の中心人物になるように役割を持たせましょう。


選外作品(C~E評価・以下順不同)


C評価
村上侑「運命、じゃない」/江守結「この恋はリスク対策できません!」/
タカツ巳詩「home」/鳥野りと「緋国の王子と星影のつがい」/棗なつ「くたびれ者の恋受難」/
夕暮れたそ「ハッピーエンドは揺るがない」/平中侑子「非生殖性ラブ・コレクトネス」/
胡桃一葉「雨上がりのアンブレラ」/東紗鋳樹「雇われご主人様と変態社長」/
蘇彼ハル「蘇生する彼等」/草津玲緒「口づけで枷をはずして」/上田秋人「さみしくない人々」/
真夜野ふみ「駅前ヒーローは踏み込まれたい」/春日すもも「ハニーミルクラテを君に」/
美咲八重「銀の狼王と贄の狩人」/椿木あかる「ふたり、視差を超えてもう一度」/
牛すきうどん「痺れるようなキスをして」/生方海風「花の目覚め、涙雨、幸せの虹」

D評価
うさぎのまゆ「溺愛探偵とポーカーフェイスのお医者さん」/鶏内ひよ胡「たったひとりの色彩」/
設楽ひえん「かたつむりの角の上」/加藤よしき「金曜日の朝、旅に出る」/
奈々川わかな「不眠症のウィンドソックス」/氷宮多稀「ガラスの部屋の住人」/
七角計「不器用な吸血アルファに毎夜の花束を」/葉月めいこ「おいしい恋が舞い降りる」/
早見咲紀「ネコになりたいー前世の僕と現世の僕ー」/海乃彼方「春の温度」/
坂本みゆ「桜セゾン」/春木ノイ「みだらでやさしい止まり木」/
若桜える「このキモチはノンフィクションです」/八束りん「梅雨はあけたとみられます」/
まなせりじゅ「奇跡のひかり」/辻宮円「夢から醒めても君を待つ」/
天原カナ「青空の下で会いましょう」/香夜みなと「シグナル」/糸文かろ「木漏れ日の君」/
石井瑠衣「猫はかすがい」/二久アカミ「サイレントレター」

E評価
横原凪「君におくりたい」/鴨川ぽめこ「エクスタシーを教えて」/山石万葉「淫らな悪魔に救済を」/
葛城うさと「神様に二度恋する」/舞々「シリウスに思いを託して」

規定外
幸崎ぱれす「月の瞼」


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