結果発表

第15回小説ショコラ新人賞にご応募いただきありがとうございました。
厳正なる審査の結果、キラリ賞を二名選出いたしました。
次回、期待賞以上の作品が出ることを期待しております。どうぞ奮ってご応募ください!


◆書評◆



総評



今回、全体的に文章のレベルが高い作品が集まりました。
しかしながら、受と攻のやりとりがあるものの
ドラマ性に欠け今一歩高評価につながりませんでした。

受と攻とのやりとりがあること自体は大事ですし、とても良いことですが、
日常のやりとりだけでは読者の興味を継続して引くことができません。

第14回の総評でも触れましたが、お話の軸となるべき事柄を設定し、
導入から日常に変化をつけていく必要があります。
この軸が曖昧ですとドラマ性も薄くなりますので、
繰り返しになる部分もありますが以下を参考に投稿作品を見直してみてください。

お話の軸とは、お話が始まる「きっかけ」であり、最後まで語られるべき出来事(事件・目的)です。
つまり導入で示した変化の兆しが、最終的にどう決着したかでまとめる必要があります。

お話の導入では、以下の例のように受と攻とが出会う冒頭のエピソードと
密接に関わらせるとその後の展開をさせやすいでしょう。

例)
・主人公が□□□な理由から彼女を作ろうと決意するが…
・主人公は□□□な理由から平凡に暮らしたかったのに、攻によって○○に巻き込まれ…
・あるプロジェクトを成功させるべく受は○○しようとするが、攻は××すべきと言い…
・まったく接点のなかった受と攻がある目標のために、協力しなければならなくなり…

そして、冒頭で示した変化の兆しがどう決着したのかを、
結末で示さなければなりません。

例)
・彼女ではなく彼氏ができた。
・気づいたらモデルとしてデビューし、その後も続けていくことになった。
・○○でも××でもない、それぞれの利点を活かした△△に決定し、プロジェクトは成功した。
・死力を尽くしたものの目標は叶わなかったが、満足する結果となった。

など、結末は著者の考えるだけできます。
ただ主人公たちにとって後味の悪い結果すぎる結果は避けましょう。


話の軸(大きな流れ)が決まったら次に考えるべきは、
二人が喧嘩したり、惹かれあったりするための小さな事件です。
それを入れ子にします。

導入で示した変化の兆しが、小さな事件で一見「めでたし」かと思いきや解決しておらず、
小さな事件以上の激動が主人公たちに襲い掛かり、すれ違いなどを乗り越え結末を迎えるなど、
小さな山場を入れ子にすることで、大きな山場を作ることができます。
もちろん大小の山場には関連がなくてはなりません。
全く別の事柄を持ってきても小さな山場が二つできるだけで盛り上がりません。

例えば…
魔王を倒すために勇者(Lv.1)は旅立ちますが、
大体の物語においてまっすぐに魔王城に向かうわけではありません。
魔王を倒す前に仲間との出会いや絆が深まるエピソードが入ったり、
立ちはだかる四天王たちとのやりとりがあることで、
魔王を倒すという目的(結末)にドラマが生まれるのと同じです。
そして意味有りげなキャラの行動には、ちゃんと意味をもたせましょう。
勇者がいかにも魔王絡みの暗い過去があるようなことを仄めかしていたのに、
それが明らかにならずにお話が終わってしまった、
「あれは何だったの?戦う原動力は何だったの?」となってしまうのと同じです。
物語を俯瞰することで、小説の質はぐっと向上します。
プロット時に自身の作品がどのような構成になっているかじっくり分析してから、
執筆に入るようにしてみてください。

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個別評価シートは9月発送予定となります。
ぜひそちらも参考にしてみてください。


◆受賞作品◆
【大賞】
該当者なし

【佳作】
該当者なし

【奨励賞】
該当者なし

【期待賞】
該当者なし

【キラリ賞】
辻宮円 「少年と茶袋」
寒川凍 「不器用な二人の化学反応」


キラリ賞 ──── 賞品5千円分図書カード
辻宮円「少年と茶袋」(原稿用紙 118枚)

◆あらすじ◆
茶業界の名家・二階堂。古いやり方を強いる父に反発する次期当主・剣は経営に携わり頭角を現していた。
そんな剣に従順な6歳年下の美しい弟・翼は、類まれなる点前の才能を持っていた。
翼が十八になった年に、二階堂家の重要な取引先である三千院家の令嬢との縁談が持ち上がる。
当然受けるだろうと思っていた剣だったが、翼はその場で断りを入れる。
自分に対する裏切りとも取れる行為に激昂する剣は、
翼に幼い頃から抱いていた兄に対する禁断の想いを打ち明けられる。
己の抱いていた理想の弟像を押しつけていたことに気づいた剣は、
その罪悪感から求められるままに翼を抱くが湧いたのは生理的な嫌悪で……。


◆評価 C+◆
物語の始まりはインパクトがありました。
『兄弟』という禁断の関係を拒絶する主人公もリアリティがあってよかったです。
ただ、主人公が徐々に弟に惹かれていく気持ちの変化が急なために、
最後想いを通じ合わせるシーンは唐突に感じました。
ページ数もまだ余裕がありますので、恋愛面の感情の流れは丁寧に描くようにしましょう。
攻の仕事の描写などもあり良かったのですが、
仕事をしている場面を増やすなどもう少し話を膨らませた方がより良くなるかと思います。
文章としましては、間違っているわけではありませんが
全体的に固い表現が多く、時代劇のような印象です。
設定のせいもあるかと思いますが、もう少し今どきの言葉遣いにしていただいた方が
読みやすくなると思います。
また、状況が分からない描写が所々ありましたのでもう少し分かりやすく書くように心がけてください。


寒川凍「不器用な二人の化学反応」(原稿用紙 143枚)

◆あらすじ◆
完璧な美貌のせいで孤独に生きてきた大学生の司は、
恋愛を諦めてオナニーに熱中した結果、自慰ノートを付けるまでになっている。
一方、友人の黒川は、母親の嫉妬に狂った姿を見てしまったことがトラウマになり、
特定の相手を作らず適当に女と遊んでいたのだが、司には初めて会った時から強烈に惹かれていた。
ある時、司は黒川が自分の名を呼びながら自慰をしている現場に居合わせてしまう。
それ以来、司も彼をオカズに自慰をするようになっていたが、
その妄想を書きつけたノートを黒川本人に見られてしまい…。


◆評価 C+◆
文章力、構成力はまだ未熟です。
前半は短いシーンが細切れに続き、視点がころころ変わるので慌ただしく読み辛かったです。
状況の描写も足りないので、誰がいつどこで何をしているのかは最低限わかるようにしてください。
キャラは魅力的に書けていますが、司が抱えている問題(美形すぎて恋愛できない)が
簡単な説明で終わっていて説得力がありません。
過去の失恋の内容や自慰ノートをつけるに至った経緯をもっと詳しく書くべきでした。
互いを好きになる過程が無理なく書けていて楽しめましたが、大きな障害がなく盛り上がり不足。
ベタではありますが、黒川に本命の「彼女」がいるという誤解を引っ張ったり、
自慰ノートを勝手に見られたことで揉めてほしかったです。
ラブレターの誤解も呆気なく溶けてしまい肩透かし。
明るい作品でも、キャラを落とすところでは落とすべきです。
面白くするための材料はちゃんとあったので、もう一段階深く考えて有効活用してください。


選外作品(B~E評価・以下順不同)


C評価
なないろ毛糸「はぐれ羊は一匹猫の夢を見る」/
あかがね瑠瓔「漂泊の皇子ー愛は彼方の都、桂花となりて咲く」/
田中ライコフ「真面目すぎにもほどがあるっ!」/谷村にじゅうえん「ユーマニオン・レッド」/
なかむら七「オタクの恋は三次元」/桐ちとせ「こんなにひとりでいたいのに」/
百々地一凛「優しい指先」/山田あんこ「蒼くんの恋はひたむき」/
高村「きみが好きで、大好きで、」/八束りん「心臓に檸檬」/
あずま紘「初恋リテイク」/大山りこ「ドSもどきの恋愛フラグ」/
湖川わこ「出会ってくれて、ありがとう」/江守結「コンドライトの奇蹟」/
泉あおい「名もなき世界に口づけを」/朝霞英一「Mio Gattina NERO!」/
小春「おいしいごはんがまっている」/永倉ミキ「千の春と終わらない約束」/
高槻未帆「忘れられない人」/うさぎなゆま「エゴイストの彼と小心者の不可解なトキメキ」/
いろは「言えない、言わない、言いたい気持ち」/沢村基「ガンスリンガーガイズ」/

D評価
荻原歓「降りしきる黄金の雫は」/梅之助「兄弟遊戯」/小笹祐「昨日・今日・明日」/
橘華印「スーパーハニーになりたくて」/叶こうえ「ブロマンス?」/暁天ユカ子「永遠のない人」/
雫石ナツオ「Natural Scent」/桐山撞稀「死にたい彼を生かす方法」/加藤色葉「始まりは嘘」/
にこ「はちみつ上司の忘れ方」/野桜七星「人魚姫は子供を産まない」/清佳梨乃「泣くな、弟よ」/
笹野ことり「ワガママ猫と干物男子」/雫ゆる「小泉くんのライフログ」/
竹薗水脈「宝惺学院高等寮」/


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