結果発表

第11回小説ショコラ新人賞にたくさんのご応募いただき誠にありがとうございました。
厳正なる審査の結果、キラリ賞2名を選出いたしました。
次回、より多くの入賞者がでることを期待しております。奮ってご応募ください!


◆受賞作品◆
【大賞】
該当者なし

【佳作】
該当者なし

【奨励賞】
該当者なし

【期待賞】
該当者なし

【キラリ賞】
紀里雨紗 「千年の孤独」
花こよい 「雫の向こうで」


◆書評◆



総評



今回も残念ながら受賞作が2本という大変厳しい結果となりました。
バラエティーに富んだ作品が集まり、
各作品にラブシーンが入るようになったなど、喜ばしい点もありますが、
全体的に物語の構成に問題のある作品が多く見られました。
問題点と解決案を解説しますので、参考にしてみてください。


具体的な例としては、おおまかに以下が挙げられます。
(1)攻(受)とより、当て馬やモブとのシーンに力を入れている(エロ含む)。
(2)過去にしがらみのある設定で、過去ばかりを描写している、または過去の描写がない。
(3)視点が脇キャラになったり、書きにくい部分だけ視点がパートナーに変わったりする。

(1)に関しては、
 攻(受)以外との絡みが好きなのか、印象づけようとしてかは分かりませんが、
 肝心の攻(受)との絡みが薄くなってしまっては、本末転倒です。
 攻と受のラブストーリーでなくては、その話である意味がないからです。
 当て馬やモブはあくまで、攻(受)の引き立て役です。
 当て馬やモブよりも攻(受)とのシーンの比重を重くしてください。

(2)に関しては、
 過去にしがらみのある設定はよく見られますが、
 現在軸を放って過去ばかりを描写されてもつまりません。
 これは過去シーンに攻と受がいればいいということではありません。
 現在軸での出来事が過去の解決だけで新しい事が起こらないならば、
 時間を経過させた意味がありません。
 過去を中心に書きたいのであれば、回想で書かずそこからお話を始めましょう。
 逆に、過去の描写がゼロだと何が問題だったのかわからなくなりますので、
 多少は必ず入れるようにしてください。

(3)に関しては、
 一般書籍でたまに見られますが、弊社では脇役視点は推奨しません。
 なぜなら、恋愛ストーリーの当事者ではない脇役に感情移入する必要がないからです。
 端から見た二人を書きたくて…は、蛇足です。
 脇役が思うことを読者に思わせる作品になるように描写しましょう。
 またほぼ攻(受)視点で、一部分だけパートナーの視点が入るのも良くありません。
 読んでいくうちに「なるほど」と思わせる狙いがあるのならばともかく、
 ある出来事の説明のために、などが理由であれば単なる技量不足です。
 攻(受)視点のみで書けるように、ある出来事のヒントを読者向けに散らばせたり、
 主人公に聞き出させるなど工夫をしてみてください。


これらは作品を書き上げてからの見直しでの修正は難しいので、
プロット時に各のシーンの重要度、長さを決めるようにしてください。
また書き上げた後には、推敲をしっかりしましょう。

推敲が自分では難しいという方は、
投稿に必要な「あらすじ」を利用してみてはいかがでしょうか。

・あらすじに書いていることが、作中には書いていなかったりしませんか?
 →ストーリーに必要なことなので書き足しましょう。
・たくさん書いたシーンだけど、あらすじに反映していないシーンはありませんか?
 →ストーリーに必要ないことなので削っていい部分です。
・さらっと書いたけど、これがないと話が破綻するところがありませんか?
 →削ってはいけないストーリーに大事な部分です。

ざっと見ただけでもこれだけのことが判断できます。
評価シートで冗長さを指摘された人は特に気をつけてみてください。


最後に、これらの指摘は原稿用紙150枚という短編作だからというわけではありません。
長編作であっても冗長さは欠点にしかならず、不要なシーンは不要です。
思い切って削るようにしましょう。意識するだけでもだいぶ改善されるかと思います。

******

課題は見つかっているけど解決のアプローチ方法が見つからないという方は、
応募用紙にある「総評で取り上げてほしいトピック」にご記入ください。 
同様の課題を多く見かけた場合などに総評で取り上げさせていただきます。

原稿用紙150枚の中でお話を過不足なく作り上げることは本当に大変なことです。
ですが、取捨選択をしっかりと行えば必ず収まるはずです。
応募時に個別の評価シートを希望された方は、そこでの意見もぜひ参考にしてください。
次回のご応募、お待ちしております。


キラリ賞 ──── 賞品5千円分図書カード
紀里雨紗「千年の孤独」(原稿用紙 150枚)

◆あらすじ◆
人は生まれ変わる時に前世のことを忘れるが、
三途の川の橋守が出すお茶を飲まなければ記憶を失わずに済む。
ただし次の世まで千年間、冷たく暗い川の底で過ごさなければならない。
平安時代、双子に生まれ存在を秘匿されていた由比は、
無愛想だが優しい家庭教師の彬理に恋をするが、想いを伝える前に二人は非業の死を遂げる。
来世で彬理を探すため、由比はお茶を呑むことを拒否した。
そして現代、深散として転生した由比はお人よしが災いして借金を背負い、
AVに出演させられようとしていた。
だがAV監督の周青は深散をこきつかうものの一向に撮影に入ろうとせず、
「冷たくて怖い人」に見えた周青の意外な優しさに深散は惹かれていくが……。

◆評価 B-◆
まず良い点としてはキャラ・設定が魅力的であり、興味をそそるということ。
特に深散の素直で天然な性格は可愛く、その鈍感さで自然に話をこじらせることに成功しています。
ツンデレ攻とのかみ合わないやりとりも楽しく、悲恋からの転生という
ロマンチックな王道ネタにコミカルさを添えていて良かったです。
しかし内容を詰め込みすぎ。全てのシーンが慌しくて、状況を理解しづらいです。
恋愛小説において重要なキャラクターの心情の変化も、読んでいて自然に感じ取れるものではなく、
「はい、ここで気持ち変わりました! 覚えておいてください!」という授業の要点のような有様でした。
大切な場面をじっくり書くため、優先度の低い箇所は削る、説明だけで済ませるなどの工夫が必要です。


花こよい「雫の向こうで」(原稿用紙 112枚)

◆あらすじ◆
雨恐怖症の会社員・芦谷有紀は、雨に降られた会社帰りに
雨宿りに立ち寄った軒先で、高校時代の同級生佐上翔太と8年ぶりに再会する。
高校時代、雨恐怖症のせいで他人と一線を引いて付き合うようにしていた芦谷は
それに気づいてくれた佐上が唯一の理解者となった。
だが、高校三年のある雨の日、告白されてキスをされる。
小さい頃、雨が降っている日に家の鍵を忘れて困っていたところに声をかけてくれた
同じ階の女性の家で雨宿りさせてもらったら睡眠薬で眠らされキスをされてしまったことが
トラウマになっていた芦谷はその瞬間、フラッシュバックして佐上を突き飛ばしてしまう。
それ以来の再会だった故、最初は戸惑う芦谷だったが、
食事を重ねるにつれ、再び二人でいることが心地よくなっていた。
そんな中、佐上の同僚から佐上にはずっと想い続けている人がいると知る。
それがどう思い返しても自分では当てはまらず、芦谷はショックを受け…。

◆評価 B-◆
主人公・芦谷と佐上の細やかなやりとりはよく描けていました。
ただ、「雨恐怖症」というキーワードがありながら、
それを生かしきれていない印象を受けました。
雨が降るだけで体調を崩すほどのトラウマなのにその原因も弱いし、
最後克服するような出来事があるわけでもなく、あっさり雨も良いという考えに変わっているので
読んでいる方としては、「雨は良い思い出がないから好きじゃない」程度に感じます。
雨以外にも『ミルクティー・キス・女性』と、トラウマになってもおかしくない
要因があるのになぜ『雨』にしたのか説得力に欠けたのが残念です。
正直、雨というトラウマがなくても差し支えなく進むストーリーになっているので
ページ数にまだ余裕があることですし、「雨恐怖症」を佐上とともに克服しながら
想いを通わせていくストーリーの方が、テーマの意味も生きてくるかと思います。
文章ではシーンが変わるたびに時間の経過説明から入るので
わかりやすくはありますが、説明くささが出て情緒がありません。
全体的に感情面は丁寧に書けているのですが、状況説明についてが
やや単調に感じますので今後の課題にしてください。


選外作品(B~E評価・以下順不同)


B評価
小豆なこ「幸、来たるカフェ」/紺きりお「falling」/矢崎甘夏「歪む檻」/
北ミチノ「華一夜」/桐ちとせ「サマー・オブ・ラブ2016」

C評価
八ツ藤多「目は口ほどに恋を言う」/草壁寿美「Nobility」/佐東八十一「月がきれいに見えるまで」/
逢生キリヱ「オリオンに導かれて」/高丘暁「いちご色の朝に」/レイカ「俺の犬」/レイカ「恋の虜」/
多田名月子「恋のメタファー」/雨音雫「憧れと嫉妬」/日野うめこ「ひとみぼれの魔法」/
楠若葉「ノーカウント」/いみづか右京「出来損ないの愛情」/押川遥「Yours fatefully」/
海咲希「だから恋に落ちて」/三雲久遠「九年セフレ」/江成ゆう「ヒュブリスの代償」/
信乃ごう「ヒキ以上の恋」/わらじ虫「居候で候」/衣吹密「無花果の実ふたつ」/
矢崎甘夏「常にこの世を見ていない」/篠谷エツ「招き猫の逆襲」/冬真「Reset or Delete?」/
六角水奈月「義躰の恋人」/いちい香佑「夏の庭」/午後野つばな「忘れないで」

D評価
中原里由宇「だから井口は頭が良い」/干支愛紀「夜のオカリナ~ジャパニーズパンツ~」/
草壁寿美「神様の肉惑」/水谷綾子「憩いの壱番と傍の君」/水谷綾子「池のほとりと待つ君と…」/
古都子「ひたいにきす」/羊乃宇留「ダブルS」/ミカックマ「ミルクハウス心音」/
三上黎「美術室の虹」/相川空良「チョコレートとペンギンのあいだ」/可賀レトラ「廃屋の春」/
おりべ美緒「モーモー王子のアイスクリーム」/夏目圭「どうして彼を選んだの?」/
良奈・ストー「恋をして繋がって」/如月香「弱虫な君に」/王子智琉「恋におちた」

E評価
白「秘密」/佐藤みつき「事務男子@東京営業鑑査室」


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