結果発表

第3回小説ショコラ新人賞にご応募いただき誠にありがとうございました。
厳正なる審査の結果、期待賞・キラリ賞を各二名ずつ選出いたしました。
期待賞を受賞しました2作品を2013年小説ショコラweb1月号に参考掲載いたしますので、
ぜひ今後の参考にしていただければと思います。


◆受賞作品◆
【大賞】
該当者なし

【佳作】
該当者なし

【奨励賞】
該当者なし

【期待賞】
「愛を綴るひと」 伊佐野歌緒
「俺だけのヒーロー」 伊勢原ささら

【キラリ賞】
「朔望」 たすく祐
「君だけの欲張り」 高端連


◆書評◆



総評



今回は日常系のお話から王道、ファンタジー等、バラエティに富んだ作品が集まりました。
個性を出そうと凝った設定や奇抜なテーマを選んだ方も多く、それ自体は喜ばしいことなのですが、
しかしながらその設定は読み手にわかるように書けておらず、
独りよがりになってしまっている作品もありました。

著者は作品を通してしか読者に意向を伝えられません。
造語やその世界での常識を、何も知らない人が呼んでも伝わる説明になっているのかどうか、
考えながら書く癖をつけるようにしましょう。
キャラの心情も、書き過ぎだと思うくらい入れてやっと伝わることが多々あります。
自分が知っていることを、読者が知っているとは限らないことを常に意識するように心がけてください。

また投稿作品ではあっても読者がいることを考えて
テーマやキャラ設定を作るようにしましょう。
書店に並んでいたら手に取りたくなる設定ですか?先が気になる展開ですか?
読者の立場になって今一度作品を確認してみてください。

商業作品を意識するという縛りがあっても。
著者の好きな設定・展開を組み込むことはできます。
そしてそれは読者に必ず自ずと伝わり、魅力となります。
どのようにすれば萌える作品が作れるのか工夫していってください。

***

今回、きちんと設定やストーリーを考えている作品が多くありましたが、
その一方で、展開に捻りがなかったり恋愛面がおろそかになってしまっていました。
作品を書いていく上でさして重要ではない設定は削る等の柔軟性も大事です。
より良い作品を目指し、今後も努力を怠らないようにしてください。
次回のご応募お待ちしております。


期待賞 ──── 賞金1万円
「愛を綴るひと」伊佐野歌緒 (原稿用紙 150枚)

◆あらすじ◆
大物作家・里見との別れで大手出版社をクビになり、
今は小さな出版社に勤める国府田睦斗は、ある日偶然乗った終電で落ちていた小説原稿を拾う。
興味本位で読んだその作品は革新的な物で作者に興味を持つが、
弱小出版社の編集の身では何をすることもできず、翌日作者らしき人物に原稿返却のための連絡を取った。
受け取りにやってきたのは大学生の大桑草介だった。
作品の感想を求められ、咄嗟に編集であることを隠しながらも的確な指摘をする国府田。
できればこれからも相談に乗って欲しいと大桑に言われるが、
彼の才能と若さゆえの純真さ力強さに心惹かれかけていた国府田は、
これ以上深みにはまりたくないと距離を置こうとする。
しかし大桑はその距離をどんどん詰めてきて…。

◆評価 B◆
設定やキャラクターに大きな特殊性はありませんが、
ストーリーの構成もちゃんと考えられており、盛り上がりがあります。
電車で原稿を拾うというのも、国府田と一緒に作者がどんな人物なのか
想像を巡らせるワクワク感があって、物語の掴みとしてはとてもよいです。
ただ、その小説がどんなものなのか、描写が少々抽象的というかぼんやりしているのが惜しかったです。
全体的に、国府田寄りの視点とはいえ大桑の人物背景があまり描かれていないのが残念でした。
実は高校生という設定を含め、作家としての才能があるのなら尚更、
大桑が普段どんな生活をしていてどんな物に興味を持っているのかなどを書いて、
キャラクターに厚みを持たせないと、
「才能がある」という設定だけが取って付けられたように感じてしまいます。 
また、国府田の行動に伴った感情があまり書かれておらず、
どういう考えでそういう行動を取ったのか判りにくい部分が多々あります。
視点的に少なくとも国府田の心情はもっと書き込めるはずなので、
その辺りを丁寧に追っていくともっとよかったかと思います。 
大桑が実は高校生だったことや、国府田の里見絡みの過去のトラウマなど、
面白くなりそうな要素があるのに、それらが絡められていないのはもったいないです。
設定の細部をもう少し踏み込んで考え、それを話に絡めることを意識してください。
文章的にはまだまだぎこちなく、会話と会話のつながりがスムーズでないところなども多いので、
勉強が必要です。


「俺だけのヒーロー」伊勢原ささら (原稿用紙 150枚)

◆あらすじ◆
文具メーカーの営業をしている岡田蓮は、たまたま明け方に出勤中、
昔の人気ヒーローマンガ「闘え!ゴリラキング」のコスプレをした人物と遭遇する。
被り物で顔はわからなかったが、蓮は声で児童養護施設施設の前で箱を積んでいるゴリラキングが
製品開発課のエリートである鳴海秀一だと気づいた。
普段、唯一自分の思い通りにならない鳴海の秘密を知った蓮は、嬉々として話しかけるが、
彼はいつものそっけない態度を崩すことはなかった。
そんな態度に焦れて鳴海を問いつめるた蓮は彼のマンションに連れ込まれ、薬を使って犯されてしまう。
さらにその姿を撮影され蓮は憤慨するが、翌朝の新聞で、
鳴海の怪しい行動が施設に匿名でランドセルを寄付する為の行動だったと知り……。

◆評価 B◆
とてもBLらしい作品でした。
クセのない文章で読みやすく、好感が持てます。
男らしい受けとクールな攻めというキャラの設定も良かったと思います。
主人公である蓮の鳴海に対する、反発心から恋への心情の変化も丁寧に書かれていました。
ただ蓮の描写に比重を置きすぎており、鳴海に対する描写が疎かになりがちなのが気になりました。
鳴海がクールビューティーであることはわかりますが、その他の外見等の説明がなかったり、
蓮のことがずっと前から好きであったというのが、ご都合主義的になってしまっていましたので、
前フリがもっとあると良かったと思います。
構成に関しても、まとまりがあります。
ページをきっちりと使い、よく練られているのが伝わってきました。
しかし、慈善活動をしていることをバラされないよう、蓮の飲み物に薬を盛って犯してしまうなど、
強引な箇所がありましたので気をつけてください。
またテーマを一時期話題になったタイガーマスク騒動からヒントを得たのだと思いますが、
とくに捻ることなく書かれ、意外性のないまま終わってしまったのが残念です。
まとまりのある作品作りができることは強みですので、
今後はラブシーンも含め、細かい部分を工夫していくとより良くなるでしょう


キラリ賞 ──── 賞品5千円分図書カード
「君だけの欲張り」高端連 (原稿用紙 150枚)

◆あらすじ◆
長い間親友に恋していた須之内隼人は、その親友に恋人ができたと聞き、
自棄になって彼に似た男と行きずりに関係を持とうとするが失敗。
その場のトラブルを偶然居合わせた青年・江崎直之に助けられ、
勢いで自分の辛い胸のうちを告白してしまう。
もう二度と会うことはないのだろうと思っていたら、須之内が趣味で通うボウリング場で再会する。
そこは須之内の親友の勤め先で、自分の恋心については絶対に喋らないよう江崎に口止めすると、
その代わりにボウリングの先生をしてくれと交換条件を出してくる。
次第に仲良くなっていく二人だったが、あることが元で口論になった時、
江崎に突然キスされ須之内は驚き混乱する。
その後江崎の謝罪により仲直りするが、親友に自分の想いを告白した方がいいと勧められる。
決心して親友の元に赴くと、彼の恋人が男であることが判明。
互いが親友の位置を失いたくないがために何も言い出せなかったことを知り、
須之内は親友への恋心と決別する。
それを報告すると今度は江崎に告白され、
彼が勝ったらその気持ちを信じるのを条件にボウリングの勝負をすることに。
セミプロ程の実力がある須之内に勝つため努力を重ねる江崎に揺さぶられる須之内。
そしていよいよ勝負の日が---。

◆評価 B-◆
お話もキャラクターもすんなり入ってきて読みやすかったです。
ボウリングというBL小説ではあまり取り上げられない題材も、うまく絡められていたかと思います。
受の心情も順を追って破綻なく書かれており、無理のない話運びや嫌味のないキャラクターなど、
実力的にはある一定のレベルに達しています。
ただ、うまくまとまっている分、勢いやパンチに欠けてしまっている印象もあります。
ラストも少々あっさり気味で、もう少しやりとりがあってもよかった気がします。
全体的にもう少し伏線を張ったりして、盛り上げる工夫や努力をしてみてください。
また取り上げる題材も、もう少しキャッチーさのあるものの方がより読み手の興味をひけますので、
題材の選択は慎重に行うとよいかと思います。


「朔望」たすく祐 (原稿用紙 150枚)

◆あらすじ◆
半年前に少年院をでてクラブオーナーのヒモをしていた石神朔は、
ウリをしていると噂されるハルヤに誘われ、それ以来ときどき彼とクラブの個室で寝るようになる。
朔は次第にハルヤに惹かれていくが、彼が朔の双子の兄の同級生で
自分がただの代用品だと知りショックを受ける。
腹いせに兄の彼女をレイプし、何も知らない兄に成り済ましてクリスマスにハルヤとのデートを楽しむが、
兄への想いを思い知らされ惨めになる。
その後、兄の彼女をレイプしたことがバレて責められた朔は、初めて兄に言い返す。
ハルヤが欲しいこと、もし兄の犯した親殺しの罪を被らなければ自分がハルヤと出会っていたことなど、
溜まっていた膿を吐き出し、口論を止めに入ったハルヤにすべて聞かれてしまう。
だがハルヤに最初こそ兄の身代わりにしていたが気づけば朔に惹かれていたと告げられ、二人は結ばれる。

◆評価 B-◆
描写は丁寧で世界観もしっかりしています。
キャラもそれぞれ立っていて個性が感じられ良かったです。
荒削りではありましたが最後まで読ませる力強さ、勢いが感じられました。
改行が少ないと全体的に重い印象になります。また字下げを忘れないよう気をつけましょう。
また作中に何人か脇キャラが出てきますが、
そのキャラ達とのやりとりでページが割かれてしまったのが残念でした。
主人公二人ともが暗い過去を背負っていることもあり、朔がハルヤに惹かれていく過程や、
ハルヤの中での気持ちの変化など、もっと受けとの関係に焦点を絞ると深みがでて良かったと思います。
兄とのエピソードは多かったのですが、
なぜ兄にそこまで尽くしていたのかも説得力が弱く感じられました。
そして女性キャラとのラブシーンはあったという事実だけで良いので、
具体的には書かないようにしてください。


選外作品(B~E評価・以下順不同)


B評価
高津キツキ「あなたのとなり」/宮古みわ「脚をもがれた人魚を恋う」/阿久津怜子「逆光の中で」/
刀里愛美「キューピッドはお手洗がお好き」

C評価
チャーリー銀次「眠れる夜をあなたに」/村咲泉「sotto voce」/亜筒まあ「恋の話をしよう」/
花邑月子「魔王と勇者と小さな姫君」/未折屋「そらのおと」/未折屋「白い波は海でなく」/
沙色みお「秘密のアルバム」/糸賀そまり「恋愛オプション」/水原琴子「躾のなっていない男」/
上原一馬「弟じゃない、ぼくのこと」/町屋あずみ「夜の帳は赤く燃え」/天泉千種「紐屋の息子」/
森川栞「聖家族」/瀬戸慎「ひかりの在処」/西瀬雪「青い糸」/大熊あゆみ「バッドバイバイ」/
露月祈楡翼「オレンジ・タイム」/天水結理「恋愛パラノイド」/宗谷珠生「あばたもえくぼ」/
織田万里「スィートライフ」/真瀬青「甘色メランコリア」/五月まゆ「PP~ピアニシモ」/
倉本紗矢子「愛しい背中」/奥菜々子「真夜中の会議室」/菜乃ハナ「花嫁一匹いかがでしょう」/
桜鬼あうん「いつわり」/さとう小春「透明な手錠」/北ミチノ「一抹の恋」/
暮野逢「キヲクノカナタ」/眞嶋燿子「いつか、どこかで、きみと。」/
氷宮多稀「紅茶とマフィンと次の恋」/桐井エリヤ「初花散らす春の宵の」/上野知「夏を解く」

D評価
宮本音瑠「だから、ビジュアル系っていうな!」/日生桔梗「依頼主は男子高校生」/
友也舜「柔な恋情」/藤井あきら「月とパキラと…月」/椎名未緒「偶然くれた恋だった」/
八五文子「眼鏡の奥に隠してる」/真水径「家電屋スゴロク」/真水径「心中立て」/
花宵小夜子「沈丁花の花咲く頃」/綿花うい「Biter」/
唐棣色「酔って友だちとセックスしてしまいました」/有生「無垢な欲望」/
有生「陽の当たる家 薫る翳」/坂口八寿子「なにかが起こる水曜日」/
如月みゃーあ「凛と光るその微笑」/抹茶小豆「俺が王子で男が嫁で!」/
ミシマナオミ「天使の呪縛」/小川斐鶴「恋ながくながく」/波螺雫「ボーイミーツボーイ」/
花原みこ「アナザー・アンド・アナザー」/佐倉井忍「恋とは、堕ちるもの」/ヤシロリエ「Torso」/
五月海「筋書きのない恋」/RouteM「旅人」/館城凛「ステア―ズ」/
浅見麻美「個人授業~教えて、先生」山本吾一「真冬の花火」/

E評価
黒犬「世紀末の廃棄物は残酷な生き物を好む」/東山るい「投獄の叫び」/
花森くう「運命を信じてみよう。」

選考対象外作品
櫻井なつ「人魚姫の恋」


◆投稿者の方へ 次回応募時のお願い◆
   次回、下記の応募要項が変更となりますのでご注意ください。

原稿サイズ
A4以下 ⇒A4またはB5のみ。

規定枚数
400字詰め原稿用紙150枚程度 ⇒400字詰め原稿用紙150枚以内。


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